えんどう君とウチのピーナツと小さな青い馬
小学校四年生のある日、転校生がやってきました。青白い顔に猫背の細いからだ。
今思うとなかなかの美形の少年でしたが、表情はオドオドと暗く、しゃべり方はボソボソとしていました。
それが、えんどう君でした。
クラスメートですので、授業中や放課後もたまには遊んだりしたものの、そんなに親しくはしていませんでした。
転校生いじめなど高度な心理現象は、誰も持ち合わせていないようなのんびりしたクラスでした。
ある日、数人の友達とえんどう君と、僕のうちで遊びました。
僕用の本棚には、その頃の子供たちが、みんな夢中になったワールドスタンプブックのアルバムや、
コロコロコミックや、恐竜図鑑なんかがありました。
みんなでそれをまわし読みして、五時になってさよならしたのです。
冬休みになって、遊びに出かけて返ってくると、母親が、僕のいない間にえんどう君がやってきて
怪獣大百科とマンガ雑誌を借りて行ったといいました。
熱心に色んな本を見て、いいないいなと言って選んで帰って行ったそうです。
数日後、近所のタコ公園で野球をして遊んでいると、グランド向こうの道の上を
、えんどう君がとぼとぼを歩いているのをみました。うしろには弟君が付いていきます。
みんなで、おーいえんどう! と声をかけると、なんとなく寂しそうに笑って手を振って行ってしまいました。
みんなで、変なやつだな、一緒に遊べばいいのに、
そういえば、あいつの家、片親らしいよ、さみしいね、なんていう話をしました。
お正月が過ぎて、新学期。先生が言いました。
「えんどう君は、引っ越しました。みなさんにお別れが言えませんでしたね」
怪獣大百科を持って消えてしまったえんどう君。
なんとなく釈然としなかったのですが、家に帰って話すと、母親は、いいじゃないの、
怪獣の本を見るたび、あんたのことを思い出すよ、くれてあげな、といったのです。
ふうん、そういうものか。
みんなでえんどう君が遊びに来たとき、うちの店のピーナツの見本を食べて、
おいしいおいしい、といっていたのを思い出しました。ぼくは、あんまり食べ過ぎるなよ、
などと言ってしまい、かれは少しばつが悪そうに笑ったのでした。
えんどう君ごめんね。大人になって、憶えていたら、こんどはお店に買いに来てね。
いくらでも見本を食べていいから。もしかしたら、もう買いに来てたりして。
そんなえんどう君が、授業中、朗読が上手いと先生に褒められていた
小学校四年国語の教科書に載っていた話は「小さな青い馬」でした。
今読むと、泣けるなあ。http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/459100533X/250-8201446-1069858
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